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雑記

4月1日の思い出



 今の季節になると決まって思い出すことが有ります。事件、と言ってもいいかもしれません。結局真相はわからずじまいだったのですが、いまでも「あのCW」が耳に残っています。私のCWが長続きしているのも、あのCWの真相を知りたいという願望が有るからなのかもしれません。段々記憶が薄れるようです。すっかり忘れてしまわないうちに、ここに書き残しておきたいと思います。

 いまから20年ほど前、私はJA7FWTのコールサインで、7メガのCWでがんがん楽しんでおりました。特にDXとかアワードとか、決まった目標があるわけではありませんでしたので、ひたすら数が勝負とばかりに、QSOしておりました。パワーは、公認の10Wのみでしたが、結構楽しめました。いまよりよほど局数が少なかったのでしょう、DXのパイルに参加しても、大体何番目かには順番が回って来、結構めずらしいところともやっておりました。そのうちQRPに興味を覚え、どんどんパワーを絞って呼ぶようになりました。

 10WからのQRPですから、手始めに2Wくらいにしてみました。さすがにちょっと応答率が悪くなったかな、という感じでした。それじゃあってんで、もっともっとQRPにしたらどうなるかと思い、どんどんQRPにしていきました。ところが不思議なことに、応答率があまり下がらないのです。そのうえ、コンテストでもないのに599のリポートを送ってくるDX局もいました。0.5Wだぜ、と言ってやると、「0.5kWだろ?」と、てんで話が通じないのです。まだ純真で素直だったので(Hi)、単純に誉め言葉として喜んでおりました。

 そうはいっても、どうもオカシイと思うようになりました。そんなはずが無い、というか、かなり有り得べからざる交信もできてしまっていたからです。おまけに、こちらのCQに対し、かなりの珍局が呼んできたのですが、交信を澄ませた後だれも呼ばないのです。「ありゃ?珍しいと思ってるのはうちだけかな?」とも思いましたが、このようなことが度々有ると、不審になります。

 そのうち、どうも受信に切り替えた直後に、妙な音が聞こえることに気がつきました。

 当時、フットスタンバイ(足で送信受信を切り替える)方式でやっておりましたので、送信から受信への切り替えはフルブレークインなみに高速にすることが出来ました。で、受信状態になると、決まってゼロインした局が「・・ツー」と聞こえてくるのです。毎回、と言うわけではなさそうでしたが、「・・ツー」と聞こえはじめると、ずうっと聞こえておりました。しかもかなり強力です。もちろん、DXなりなんなりコールするときに、だれかが自分の周波数にゼロインして同時にコールすることは良くあります。ただ、どうにも腑に落ちないのです。

 その事に気がついてから、いろいろなパターンでオンエアし、「・・ツー」の出る出ないの記録を取ってみました。その結果、次のような特徴が有ることがわかりました。

 1、明け方は出ない。
 2、夕方〜夜にかけて、よく出る。
 3、シャックにすわって、その日始めて電波を出したときには出たことがない。
 4、周波数を変えると、直後は出ない。
 5、QRPしていっても出るときは出る。
 6、180字/分位の高速CWでは出ない。
 7、「DE」のように、短点で時間を置き受信してみると、「・・ット」と聞こえる。

 これだけの事からわかることは・・・。そう、いまならCWリピーターとすぐに思い当たります。「そんなん、あり、かヨ 」の思いは変わりませんが。がしかし、当時、430や1.2ギガのリピーターなんてのは有りませんでしたから、「リピーター」という発想が無く、何でかな???とばかり考えておりました。QRPをどんどん進めていき、送信しながら受信できれば何か解るかもしれないと思い、さらにQRPしてみました。ところが、さすがに、受信機がマスクされずに受信できるほどQRPにすると、「・・ツー」も出なくなり、結局解らずじまいでした。

 次の手として、友人に頼み、テープ録音を取ってもらうことにしました。有線電話で連絡を取り、「今から出すぞー」といいながら、「VVV、VVV・・・」を始めました。そのとき頼んだ友人は「なんかへんだぜ。途中から急に強くなったよ。」と感想をいっていました。 さて、テープを聞いてみると、たしかに途中から急に強くなっています。それだけではなく、なにかまとわりついているような粘っこい符号になっていました。ここまでいろいろな状況が明らかになってくると、さすがの私も、CWリピーター、いや、その様な言葉の発想は有りませんから、なにか、CWを受信して、再送信しているのかもしれないことに気がつきました。

 そうなると、送信現場の特定をしなければなりません。まず、CWリピーターが作動を開始するときのこちらの送信電力です。これは直に解りました。だいたい0.1Wくらいでした。つぎに、その0.1Wが届く範囲は、・・・・。これが難問でした。なにしろ0.1より強ければ全世界対応になってしまいますし、少し弱ければさっぱり飛ばないという状況です。いや、さっぱり、とはいえ、いやしくもCWですから、客観的にみて0.1Wでも半径数百kmは十分飛びますから、ほとんど特定不可能ということになります。せめて方向は、というのも、7メガ逆Vですから、ほとんど解らない。せめて3エレビームでも上げていれば、と、いまなら何とかなるかもしれませんが、当時は貧乏学生ですし・・・。更に悪いことに、0.05Wくらいでも、しばらく続けていると「・・ツー」が出始めてしまうのです。どうも、単純にいって、弱ければ「当局を探すのに時間がかかる」というだけのようでした。

 それに、だれも呼ばない珍局、というのも気にかかります。そういえば、私自身QSLカードには執着しないので、ごく気の向いたときしか出しません。ということは、相手から来たカードも、あまりチェックしていませんでした。もっとも、DXからのカードは、数年かかってくるのもまま有ることでしたので、そのだれも呼ばない珍局からのカードがこないことについても、たいした問題では有りませんでした。が、ふと、JA7YAFでやったいたずらを思い出しました。

 そのいたずらとは、以前CW会議室にも書きましたので、覚えていらっしゃる方もおありかと思います。YMがCQDXを打っているその後ろで、口笛で当時の「ど珍局」のコールで応答してやったことが有りました。QSBやらエコーやら適度に織り交ぜ、いかにも本物らしく聞こえるように、「JA7YAF JA7YAF DE ・・・」(何のコールを使ったか忘れてしまいました)とやったのです。それにたいし、いかにもおお〜やったやったとばかり、応答しかかったので、これはやばいとばかり止めに入りました、いや、その前に可笑しくなって口笛CWが乱れ、ばれてしまっていたのでしたが。

 まさか、その、同じ手でいたずらされているのかな??と思いましたが、今度は確かに電波です。しかも、いつもいつもだれも呼んでくれない局とばかりQSOしていたわけではありません。こちらのQSOが終わった後、別の局とのQSOに入ることも多かったのです。それに、あの電波、たしかにずうっと遠くから聞こえていたように思うのです。

 解ろうとすればするほど謎が深まりました。

 最後の手段と思い、意を決し、その相手を呼んでみることにしました。なんどか普通の交信をした後、例の「・・ツー」が出ていることを確かめ、やおら、

 「JA7FWT JA7FWT DE JA7FWT WHO ARE U?」

 という、何とも間の抜けたコールをしました。応答は・・・・。




 それっきり、例の「・・ツー」も聞こえなくなりました。そして、DXのカントリーの増え方は、ぴたりととまりました。あれから20年以上経っても、いまだに100カントリーとれていません。例の「珍局」のカード、10年かかって届いたものも有りますが、ついに届かなかったものもいくつかあります。中にはなにかのカード転送不具合が原因のものもあるかもしれませんが、どうもこちらから催促のカードを出すのも怖いような気がしてなりません。


 1970年の、 4 月 1 日 のことでした。 JO1FYC(exJA7FWT)